私たちの研究室は、「研究規範(ルール)を遵守」し、各自が「責任ある研究活動」に取り組んでいます。厳正かつ厳密な自然科学の研究に携わる人間として、当研究室に所属する皆さんがこれから研究活動を行う前に、「自分自身の良心と行動規範」について考えてみましょう。

これ以降に書かれた内容は、「責任ある研究活動 – 研究規範(ルール)について – 第1版,京都薬科大学 教務部委員会 編纂,2014年9月.」から引用および抜粋し、要約し直したものです。研究室への参画者には、以下の内容を理解し、誓約書に署名することをあらかじめ求めます。

1. 責任ある研究活動

大学における研究活動とは、科学に携わる活動です。私たちは、京都薬科大学 代謝分析学分野において科学に携わる者として、自己の良心に従い、誠実に行動しなければなりません。研究活動が科学の名に値し、科学の進歩と科学による社会への貢献のために、全ての研究者が共通して持つべき普遍の基本的姿勢として、以下の5点があげられます。

研究者としての基本姿勢

1) 正確である: 研究結果や情報を正確に把握する。

2) 正直である: 把握した研究結果や情報を正直に伝える。

3) 効果的である: 研究資源を無駄なく有効に使う。

4) 客観的である: 事実をそのまま表現し、誇張しない。

5) 安全に行う: 定められたルールを遵守し、安全に研究を行う。

これら5つの基本姿勢は、その活動が科学的であるために要請されるものです。「責任ある研究活動」とは、この基本姿勢のもとで、どのように行動するべきであるのかを具体的に考え、検討し、行動することによって成り立つものであり、これらを総合したものを、研究倫理と言います。この研究倫理の取り組みとともに遂行された研究に対してのみ、科学の名に値する品格と信頼が付与されます。

2. 研究における不正行為[1,2]

私たちが研究に関する基本姿勢を放棄し、研究結果を捏造(ねつ造)、改竄(改ざん)することは、それ自体が科学の名に値しない行為であり、ひいては「全ての研究は上記の観点を遵守して行われており、公表される研究の成果は真実で虚偽は含まれていない」と信じている社会全体裏切る行為と言えます。

私たちは、研究室で実施する卒業研究の研究活動において、ねつ造、改ざん、盗用を決して行ってはいけません。これらの行為は科学や研究における不正行為(サイエンティフィック・ミスコンダクト:scientific misconduct)とみなされ、それ自体として科学の名に値しない行為です。こうした行為は、自分自身だけでなく、京都薬科大学で行われている科学研究の科学性への疑問を引き起こし、ひいては科学に対する社会的信頼をも失うことにもつながります[1,2]。私たちは、不正な行為が行われていることを知ったときは、その改善に最大限努めなければなりません。

そのためには、「自分にとって都合のよいデータ」を得るのではなく、研究データを正しく評価・考察し、正確に記録していくことが求められます。日常の研究活動はもちろんのこと、得られた研究成果を発表する際にも細心の注意をはらう必要があります。

ここでは、研究における不正行為の中でも、特に基本的で重大な不正行為(ねつ造、改ざん、盗用)[3,4]について簡略に解説します。

①ねつ造

「ねつ造」とは、架空の研究結果やデータを作り、実際に行った研究成果として記録、または発表することです。科学の世界は、研究者の研究者としての良心に支えられています。「ねつ造」による科学の発展はありえません。

②改ざん

「改ざん」とは、研究材料、研究機器・装置、研究の手順を不正に操作・変更したり、研果やデータを実際とは異なるように書き換えたり消去したりする行為です。「改ざん」は、最終的な結論に至るまでのプロセスを意図的に書き換えるわけですから、それ自体が科学の名に値しない不正行為です。改ざんの疑いをかけられないためにも、また自分の研究成果に自信をもつためにも「研究結果や情報を正確に伝える」技術を身につけてください。特に、データ処理方法(データの計算法、提示法、統計解析法)は多種多様ですので、適切で正しいデータ処理方法を学ぶことは必須です。

③盗用

「盗用」とは、他人のアイディア、文章、研究記録(図やグラフ)、研究成果物(論文、発表スライド、HP等の文章や図)を実際に行った人の業績とは記さずに自分のものとして使ったり、発表したりすることです。科学は、多くの研究者が残した研究成果の積み重ねにより発展します。なぜ失敗したのか、なぜ成功したのか、なぜこの結果となったのか、これらを検証し、原因を探り、結果に至るまでの過程を解明することこそが、科学です。

盗用は、検証し知を積み重ねるという科学のあり方を根底から覆すものであり、この点で「人のものを盗んではいけない」という一般常識とは別の次元で、科学として決して認めることのできない不正行為です。

皆さんが研究を行う場合、既に報告されている研究論文や研究成果を土台として、それらを参考にしながら研究を進めていくことになります。よって、皆さんが将来行う研究発表(学会発表、卒論発表、論文発表など)では、発表する研究の手法、アイディア、データ、さらに、文章や図は自分自身のものか、そうでないかを明確に区別する必要があります。すなわち、他者によって行われた研究内容や研究方法を自分の発表に含める場合は、参考文献の記載や引用符を用いた「引用」をしなければなりません。特に、皆さんが作成する卒業論文、学術論文、研究報告書などの文章において、適切な「引用」無しに他者が作成した文章をそのまま使用することは「盗用」にあたります。くれぐれも注意してください。

「盗用」に関して、最近問題になっているのが、文章のコピー・アンド・ペースト(コピペ)です。パソコンを使ったコピペだけでなく、手書きによって写しても「盗用」になります。自分たちが以前に学術雑誌に発表した内容であってもデータや文章をそのまま使用することは「自己盗用」とみなされますので注意が必要です。

3. 研究結果の取り扱い[3,4]

①研究ノート

研究者自身がいつどのようにアイディアや実験データを得たかについて、その過程や妥当性、そして科学における不正行為に加担していないことを第3者に証明する唯一の手段が研究ノートです。ここでは、一般的な研究ノートについて解説します。

[研究ノートとは?]

研究ノートの目的は、ある時点において研究者本人の研究が、どこまで進み、何を明らかにしたのか、それは適正な実験・検証であったのかを証明することにあります。そのために、後にノートの改ざんをすることのできない形式が要求されます。すなわち「研究の公正性の証明」には、研究ノートの「記載内容の改変が不可能なこと」が必要なのです。

さらに、それをいつでも提示することができるように「適正な管理と長期間の保存」も必要不可欠です。また、研究内容や実験手法について、指導教員との議論の際や、同じ研究室のメンバーと情報を共有する際の、いわゆる「研究室での情報管理」のためにも研究ノートはきわめて有用です。

また、第三者による定期的な確認と署名が必要となります。すなわち、研究ノートへの「本人以外による確認と署名」が必須とされています。「本人以外による確認と署名」は企業や一部の研究機関・大学で行われています。

[研究ノートの選び方]

研究ノートには、その記録する媒体としてさまざまな形式があります。一般的には管理のしやすさ、信ぴょう性の高さから、製本ノートが選ばれます。また、一部のデータには、電子ファイルを用いる場合もあります。

製本ノートとは、糸とじ製本されたノートであること、連続してページ番号がついている、もしくは改ざん防止パターンが印刷されていること、そして記入者・確認者の署名欄があることとされています。これらの条件を満たすノートは市販されています。記入の際は黒か青のペン、またはボールペンを使用してください(日光などによる退色を避けるためであり、後からの書き換えを防ぐためです)。もちろん、「消せるボールペン」の使用禁止は言うまでもありません。

[研究ノートの記載方法]

代謝分析学分野では、研究室から配布した研究ノートを使用します。ノートを研究室から持ち帰ってはいけません。ノートへの記載には、上述の黒か青のペンまたはボールペン(消えないインク)を用いること。データ等の貼付には糊を使用すること。経時的および経日的に、実験が終了したその日のうちに、必要な一次情報(詳細な実験方法と生データ)を、前のページから順に書くこと。後で記入するために空白ページを設けることは不可です。記載の修正は、黒か青のペンまたはボールペンによる取り消し線のみで行うこと(修正液の使用は不可)。定期的に、指導教員による記載内容の確認を受け、確認者は記入内容の下にサインをすること。

[研究ノートの扱い方][5]

研究ノートは研究者自身が責任を持って管理するべきものですが、その所有者は研究室および大学になります[5]。その詳細は、京都薬科大学の「成果有体物取り扱い規則」で説明されています[5]。また、紛失や情報漏えいの可能性もあるので、研究ノートを研究室外に持ち出してはいけません。もちろん自宅などに持ち帰ることも許されません。

さらに、研究ノートをコピーすることにも注意が必要です。研究ノートのコピーには、指導教員および共同研究者の許可が必要となります。当然ながら、皆さんが卒業して研究室を離れる際も、研究ノート(原本)は研究室に残さなければなりません。

②データ管理

研究の内容によっては、研究のために取得したサンプル、資料、研究成果などの情報が、患者さんに関するものである場合には個人情報を、研究室で開発中の方法・物質であれば特許等に関する情報を含んでいます。従って、研究に関するデータや情報の故意または不注意等による外部への漏えいは、非常に大きな問題となります。そのため、その防止に最大限の注意を払うことが求められます。

4. 安全な研究と研究実施のためのルール

(以下、略)。詳細については、「責任ある研究活動 – 研究規範(ルール)について – 第1版,京都薬科大学 教務部委員会 編纂,2014年9月.」を参照のこと。

5. 研究倫理に関する教員の学外活動[6,7]

研究不正行為や不誠実な研究活動を未然に防ぐためには、研究者ひとり一人(大学教員、大学院学生、学部学生)が、研究活動にとり組む際の正しい心構えと行動規範を備えておく必要があります。学外からの要請により、教員や学生が持つべき倫理観、とるべき行動規範、日常的に配慮すべき注意事項に関して、当分野における具体的事例を挙げながら紹介する機会がおこります。皆さんには、個人情報保護法に則して当分野の具体的事例を紹介することについて同意を求めます。-

6. 参考文献および参考サイト

[1] 改訂版-」日本学術会議, 2013年1月25日

[2]声明「科学者の行動規範」日本学術会議, 2006年10月3日

[3] アット・ザ・ベンチ アップデート版, Kathy Barker, 監訳:中村敏一, メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2005年

[4] 理系なら知っておきたいラボノートの書き方 改訂版, 監修:岡崎康司, 隅藏康一, 羊土社, 2011年

[5] 京都薬科大学成果有体物取扱規則

[6] 日本薬学会第135回年会 一般シンポジウム「生命科学と臨床研究における研究倫理」, 2015年3月26日(神戸),
https://sites.google.com/site/integrity0lifesciences/psjsymposium

[7] 名城大学FD活動報告書38頁, 研究倫理教育講演会-科学研究における健全性の向上について-, 2015年7月9日(名古屋),
http://www.meijo-u.ac.jp/about/education/center/publication/pdf/fdkatsudo_h27.pdf